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【研修】新規賃料の積算賃料と比準賃料の関係についてー借地権付建物の新規賃料の試算方法も含むー

賃料評価に関する研修をオンラインで受講しました。

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講師は、賃料評価において、業界では有名な方で、裁判における鑑定人も多く務めていらっしゃる田原 拓治先生です。なんと金沢大学の先輩でいらっしゃいます。お目にかかったことはありませんが、「鑑定コラム」で勉強させていただいています。

「新規賃料の積算賃料と比準賃料の関係」について、家賃(新規賃料)の鑑定評価をする場合、実務上、積算賃料と比準賃料を求めます。理論上の一致すると言われていますが、実際には開差が生じるケースがほとんどです。各試算賃料の説得力を有する説得力を検討し、両試算賃料を調整の上、最終の鑑定評価額を決定しています。

今回、この積算賃料と比準賃料の開差についての許容範囲についてのお話でした。田原先生は、多数の判例(賃料増減額請求事件)を調べられ、その中で比準賃料、積算賃料がわかるものをデータ分析され、統計理論上許容される範囲として数字をお示しされました。

これまで、積算賃料と比準賃料は差が出て当然であり、差が出る要因について、資料不足や建物の個別性、地域の実情などそれなりに理由を挙げていましたが、先生によれば、差が大きすぎるとそれはそれで鑑定評価書として信頼性が劣るとのことでした。そういう発想は今までなかったので、今後注意していかないといけないなと感じました。

続いて、「借地権付建物の賃料の基礎価格」について、借地権付建物とするのか、自用の建物及びその敷地とするのかの話がありました。

鑑定の歴史の中で考え方の変遷があったことがわかり、興味深かったです。田原先生は、自用の建物及びその敷地を基礎価格とすべきというお考えです。そしてなぜ自用の建物及びその敷地を基礎価格にすべきであるかについて、その理由について理論的に説明がありました。面白いと思ったのは、基礎価格を借地権付建物としても自用の建物及びその敷地としても求められる積算賃料は同じにならなければならないということです。基礎価格の額が違っても、期待利回り、必要諸経費等の計上内容が相違することで結果、積算賃料は同じになるということです。ただ、実務上、借地権付建物である場合の期待利回りはいくらなのか、市場での賃料水準は物件が借地権付建物であるか自用の建物及びその敷地であるかによって、変わらないということ(借りる側には関係のないこと)など、借地権付建物を採用した場合にはうまく説明ができないということです。

日々鑑定評価をする場合に、手順等に沿って行っていますが、その前提条件は必ずしも確立されたものではないということに、注意していかないといけないなと感じました。