2019.11.13 【研修】金沢刑務所参観研修会 東野圭吾「手紙」
石川家庭・少年友の会の参観研修会があり、今年は金沢刑務所へ伺いました。
友の会の幹事として毎年参観研修会を企画させていただいているのですが、今回は、参観希望者がとても多く、定員をオーバーするお申し込みがあり、なかなか伺うことのできない施設だけに関心がとても高かったです。
まず、事務棟の会議室で金沢刑務所の沿革、概要などの説明を受けました。もともとは「金澤監獄」で金沢城の中にあり、次に小立野へ移転し、昭和45年に、現在の田上町に移転したそうです。刑務所の建て方は、昔は監視棟を中心に放射線状に延びる建て方でしたが、場所によって日当たりが異なるなど住環境に差が出てしまうことから今の横並びの建て方となっているそうです。定員は732名ですが、今は、定員いっぱいになることはないとのことでした。受刑者の1日のタイムスケジュールの説明のあと、受刑者には1日30分の運動が義務付けられていること、管理栄養士のもとに健康的な食事が提供されていること、社会復帰に向けた支援活動を行っていることなどを伺いました。また、受刑者の高齢化ということも伺いました。データとして、再犯者が多いということで、再犯に繋がることのないようなサポートに重点をおいており、就労支援や、釈放前指導などを行っているそうです。出所後のお金の問題や生活基盤、理解者、協力者など社会での受け入れなどがとても大切なことであると感じました。
続いて、いよいよ塀の中の見学となりました。居住区や工場、講堂などを見学させていただきました。
居住区では、1室数名で共同生活を送り、少しの私物(本など)は持ち込むことができ、テレビもありました。ただし、冷暖房はなく、ふきっさらしの状態に近い廊下はとても冬は寒いだろうし、居室も寒いだろうと想像できました。
工場では、実際に受刑者が作業をしている中を見学させていただきました。石川県の伝統工芸品である「桧笠(ひのきかさ)」を実際に製作中で、また完成した実物も見せていただきましたが、大変細かく、丁寧な仕上がりで強度が感じられました。工場もいくつかあり、軽作業のような業務を行っているところもありました。工場では当たり前ですが、私語は禁止で、持ち場を勝手に離れて動き回ることはできず、リーダーのような立場の受刑者が刑務官に相談をしたり、不足する材料を取りに行くことになっているそうです。勤勉さを評価するポイントのようなものがあり、真面目に作業をすることで待遇の差があるようでした。
講堂には、卓球の台があり、北陸は天候が悪いため、講堂内で1日30分の運動を行うことも多いそうです。舞台の横には棟方志功が「受刑者の心の糧になればうれしいです。」と昭和27年に金沢刑務所に寄贈された「山の恩」「海の恩」の油絵が掲げてあり、鉄柵の向こうの穏やかな風景に、ほっこりした気持ちになりました。
工場の横では、即席で、受刑者が制作した製品の即売コーナーがありました。金沢で作られたもののほか全国各地の刑務所での製品もあり、メモ帳から石鹸、木工製品、おもちゃ、桧笠、うどんなどがあり、私はひとこと書き(府中)を買わせていただきました。
最後に、会議室に戻り、質疑応答の時間となりました。いろいろな質問が出たのですが、率直にお答えいただき、大変有意義な参観研修会となりました。
ちょうど読んでいた、東野圭吾さんの「手紙」。
とても切ないお話でした。
罪を犯した人にも事情があり、思いやる人がいて罪を犯してしまった。
罪を犯していないけれども、身内に罪を犯した人がいた。自分のせいではないことで不遇な人生となってしまったことはとても心が苦しかったが、実際には悲しいかな、あることだろうと思った。自分も罪を背負わないといけないのか?? まさにそのような人生となってしまっている。乗り越えようとして前に進むたびにまた、身内に罪を犯した人がいることが邪魔をする。刑務所でのんきに手紙を書いている兄に腹立たしさを感じてしまう弟。兄は兄でできることを精一杯やっているのではないか?? ほんとに難しいお話でした。
なかなかきれいごとではいけないものですが、社会として、受け入れる素養が必要だと感じました。
そんなこんなでいろいろなことを感じた参観研修会。金沢刑務所の皆様、ありがとうございました。