2018.08.25 【研修】農地の鑑定評価に関する実務指針
公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会主催のeラーニング研修を受講しました。
不動産の鑑定評価に関する法律には、「農地、採草放牧地又は森林の取引価格(農地、採草放牧地及び森林以外のものとするための取引に係るものを除く。)を評価するときは、不動産の鑑定評価に関する法律にいう不動産の鑑定評価に含まれないものとする。」と規定されています。
つまり、農地を農地として使用することを前提とした評価については、不動産の鑑定評価に関する法律には規定されていないということになります。
ただし、不動産鑑定評価基準には詳細に定められていないですが、農地を農地として使用することを前提とした価格を求めることが必要となるケースもあります。そこで、昨年から、不動産鑑定士協会連合会の方で、農地の鑑定評価に関する実務指針の整備を行っていました。
ちょうど昨年、農地(田)を農地(田)として使用することを前提とした価格を求める評価依頼がありました。その時は、実務指針がまだ完成しておらず、(案)として公表され、パブリックコメントを求めている最中でしたが、その内容を参考にさせていただき、無事評価書を提出することができました。
今回作成されたこの実務指針は、農産物等の生産に着目して価格が形成される農地を対象としています。eラーニング研修を受講して、農地を農地として評価するケースについて整理ができ大変勉強になりました。
今年に入って、宅地に転用する予定の農地の価格を求める評価依頼がありました。市街化調整区域内の農振地域の農地(農用地)ですが、開発可能な属性を持つ依頼者からです。これはまさに、農産物等の生産に着目して価格が形成されているのではありません。耕作目的で利用する場合に比較して高い経済価値を実現し得る使用方法に着目した需要者側からの買い希望により、それらの投資採算性や資金調達能力を背景に価格が形成され、一般的に農家間における耕作目的での取引価格より高い水準となるという実態があります。つまり、需要者側による事業の開発利益の一部が供給者側に帰属し、転用目的での農地価格を構成しているのです。
また、農振地域の農地(農用地)であっても、公共事業の用に供するための評価の場合、価格に与える要因が異なってきます。公共事業の施行が予定されて、周辺の土地の取引価格が上昇した場合、その上昇分をどうするのか?すなわち、開発利益は周辺の土地所有者一般が等しく受けるもので、これを事業予定地の所有者だけに認めないことは不合理であり、従前と同等の土地を周辺で確保するためには、開発利益を含めた価格が公平の見地から妥当だという、積極説が通説となっています。
一言で「農地」といっても、前提条件や使用目的によって、価格形成要因が異なり、収集する資料も異なり、価格水準も大きく変わり、価格が決まるメカニズムの違いに面白みを感じる今日この頃でした。
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