2025.02.12 石田祥「猫を処方いたします。」
猫には不思議な力があって、見ているだけで心が落ち着き、そばにいるだけで安心する。『猫を処方いたします』は、そんな猫の癒やし効果を存分に感じられる物語でした。
この小説は、京都のとある病院にいる“猫を処方する”先生が、悩みを抱えた人々にそっと寄り添い、彼らの心を軽くしていくお話です。先生が診るのは、身体ではなく心の不調。そして、患者にはそれぞれの悩みに合った猫が“処方”されます。最初は戸惑いながらも、猫と過ごすうちに患者たちは少しずつ変わっていきます。
ほんわかとしていて、優しい物語でした。登場人物たちはみんな、心に何かしらの不安や迷いを抱えています。仕事のストレス、人間関係の悩み、漠然とした不安——そんな気持ちを、猫がそばでじっと見つめ、時には気まぐれに寄り添うことで、自然とほぐしてくれます。猫は何か特別なことをするわけではありません。ただそこにいるだけ。それだけで、心が軽くなるのです。私自身、猫の癒やし効果を改めて実感しました。読んでいるうちに「私も猫が欲しいなぁ」と思わずにはいられませんでした。
印象的だったのは、患者たちが自分の問題に気づいていく過程です。最初は「環境が悪い」「他人のせいだ」と思っていた人たちが、猫との生活を通じて、自分自身の本心に向き合い始めます。猫は言葉を話さないし、何かを強制もしません。それでも、一緒にいるうちに、彼らは自分が本当に求めていたものや、必要だった気づきを得るのです。先生が直接指摘することはありませんが、猫という存在を通して「自分を見つめる時間」を処方しているのだと感じました。そのやり方がとても優しく、押しつけがましくないところが良かったです。
また、この作品の大きな魅力のひとつが京都弁です。京都弁の持つ穏やかさが、物語全体にほんわかとした雰囲気を与え、読んでいてとても心地よかったです。また、その言葉を活字として目に入れ、話している状況をイメージするのも楽しかったです。
久しぶりに読書の時間が取れました!そしてとても優しい物語に出会えてよかったです^^