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【研修】令和2年度北陸地区所有者不明土地対策連携協議会講習会

令和2年度北陸地区所有者不明土地対策連携協議会の講習会がありました。

「北陸地区所有者不明土地対策連携協議会」とは、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法( 平成3 0 年法律第4 9 号) の適正かつ円滑な施行を図るとともに、北陸地方整備局、新潟・富山・金沢の各地方法務局、地方公共団体、関係士業団体が連携することにより、地方公共団体が行う所有者不明土地の取得等に係る業務の支援を行うことを目的として設立した協議会です。

 

人口減少・高齢化の進展に伴う土地利用ニーズの低下や地方から都市等への人口移動を背景とした土地の所有意識の希薄化等により所有者不明土地が全国的に増加しています。

現在、いろいろ取組がなされ始めていますが、もし所有者不明土地の探索が行われないとすると、2040年には約720万haになると推計されています。ちなみにこれは北海道本島の土地面積(約780万ha)に匹敵する面積です!!

公共事業の推進等の様々な場面において、所有者の特定等のため多大なコストを要し、円滑な事業実施への大きな支障となっています。

「土地基本法等の一部を改正する法律」が令和2年3月27日に成立し、3月31日に公布されました。

基本理念・責務に

❖土地の適正な「利用」「取引」とともに適正な「管理」を確保

❖土地所有者等の責務を明確化(登記等権利関係の明確化、境界の明確化に関する規定を追加)

が加えられ、①土地・不動産の有効活用、②防災・減災、地域への外部不経済の発生防止・解消を目指していきます。

 

所有者不明土地となる要因の一つに相続登記が未了のまま放置されていることが挙げられており、法務局では、「既に発生している相続に対応する取組」と「これから発生する相続に対応する取組」が実施されており、研修ではその内容の紹介がありました。

法務局で不動産登記簿における相続登記未了土地調査を実施した結果、最後の登記から50年以上経過しているものが大都市で6.6%、中小都市・中山間地域では26.6%に及び、登記名義人の方が亡くなられてもそのままとなっている可能性が高い土地が多く確認されました。その割合は、大都市よりは地方の方が高く、地目別では地方の田畑、山林が長期にわたり放置されている結果となりました。

5(出典:法務局HP)

法務局で長期相続登記等未了土地解消作業として長期相続登記等未了土地作業を終えた後、その対象土地の登記記録の権利部(甲区)に以下のような記録がなされ、その記録がされていれば、その土地については、所有権の登記名義人の法定相続人の調査結果(法定相続人情報)が登記所に備え付けれていることが分かるようになっています。

長期相続登記等未了土地記載例

他にも表題部所有者不明土地解消作業も行っており、表題部所有者欄の氏名・住所が正常に記録されていない登記となっている土地(住所の記載がない土地や共有者の名前がない土地など)についての所有者等の探索を開始しています。また、民法及び不動産登記法の改正に関する検討も行われています。具体的には、相続登記の申請の義務化や土地所有権の放棄を認める制度や遺産分割の期間制限を設けるなどです。

取り組みが徐々に進んでいることを実感しましたが、いろいろ問題もあり、実現には難しい面もあるのかなと感じました。

地域福利増進事業についても説明がありました。この事業は所有者不明土地について、土地利用権を設定することにより公園や広場の整備等、地域住民等の共同の福祉又は利便の増進を図るための設備整備を可能とする制度です。所有者不明土地は管理が不適切になりがちであることに加えて有効活用ができないため、大きな社会問題となっていますが、土地使用権の取得について、都道府県知事の裁定を受けることで最長で10年間(関係者の同意により使用期間の延長も可能)、所有者不明土地を使用することができるようになりました。土地使用権の取得の対価の額である補償金を見積もるために不動産鑑定評価が必要となり、その評価の考え方や所有者不明土地が地元の農産物の販売所として利用されるようになったという実際の案件についての紹介もありました。

我々不動産鑑定士の業務が所有者不明土地の解消・利用の一翼を担っていることを知り、自分も貢献ができればいいなと思いました。