2017.05.03 【研修】既存住宅インスペクション報告書の見方と鑑定評価への活用
所属する公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会主催の「既存住宅インスペクション報告書の見方と鑑定評価への活用」に関する研修を受講しました。
インスペクションとは民間事業者により行われている建物検査サービスで、目視等を中心とした非破壊による現況調査のことです。
中古住宅は、新築時の品質や性能の違いに加えて、その後の維持管理や経年劣化の状況により物件ごとに品質等に差が生じることから、消費者は、その品質や性能に不安を感じています。このような中、中古住宅の売買時点の物件の状況を把握できるインスペクションサービスへの需要が高まっています。修繕工事の必要性等を把握することができ、売主・買主双方にとってメリットが大きく、既存住宅の流通促進に貢献できます。
このように安心して既存住宅の取引が行える市場環境の整備を図るために、宅地建物取引業法の一部も改正されました(公布日:平成28年6月3日、施行日:平成30年4月1日)。
具体的には
①媒介契約締結時に、建物状況調査(いわゆるインスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面を依頼者に交付すること
②買主等に対して建物状況調査の結果概要等を重要事項として説明すること
③売買等の契約成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面を交付すること
が義務付けされました。
我々不動産鑑定士が鑑定評価において活用するER(エンジニアリングレポート)は、違法性や劣化の状況、使用上の安全性に対するリスクの存在の有無等の評価を建物状況調査として行い、合わせて、建物環境リスク評価、土壌汚染リスク評価、地震リスク評価もレポートに記載されてますが、インスペクション報告書には、建物状況調査のみで、また、劣化事象等が建物の構造的な欠陥によるものか、現行建築基準関係規定への違反の有無の判定、設計図書との照合までは含まれていないのが一般的です。
しかし、鑑定評価においても建物評価の精緻化が求められており、鑑定評価における個別的要因の調査及び分析、原価法の適用において、インスペクション報告書が大いに活用できるものと思います。不動産鑑定士が実地調査を行う際に、インスペクション報告書を入手・活用できれば、戸建住宅の構造耐力上の安全性及び雨漏り・水漏れ等に関する不具合や劣化事象等、建物の物理的側面を効率的把握し、調査に活用できます。
私はまだ、インスペクション報告書のある不動産の鑑定評価をしたことがないのですが、今後、インスペクションの実施件数が増えてくると、報告書を活用した鑑定評価も増えてくるかもしれませんね。
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