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平野啓一郎「ある男」

【2024.3.10追記】

遅ればせながら、映画版を見てみました!

ある男_本ポスター

自分の愛した人の根幹が「?」。いったいあの人は誰だったのか? 何だったのか?

なんとも心の整理がつきにくい出来事ですね。そして早くに突然亡くなってしまうなんて。

そういえば、城戸さんの奥さんの最後もそうだったと思い出しました。真木よう子さんという時点で何かあるかな(!?)という感じでしたが(笑)

何をもって「自分」というものを指し示しているのかわからなくなってしまいましたね、みんないろいろな「顔」がある。

城戸さんもご自身の生い立ちから、「谷口」に対して強い関心を得たのだろうと思った。


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平野啓一郎さんの「マチネの終わりに」はほんとに切ないお話で、心に残るいい作品でした(感想は→こちら)。

平野啓一郎さんの作品ということに手に取った「ある男」。
恋愛ものかなと思ったのですが、ちょっと違いました(少しはゆれる心を描いた場面もありましたが)。
要素が多くてちょっとヘビーなお話でしたが、人は過去、環境を引きずって生きていくものだと改めて感じさせられました。未来はまっさらで何とでもなるものではないんだなぁ。どうしてもひきずられてしまうものなのだなぁ。自分のせいではないことが足を引っ張り続ける虚しさ。
もし、途中から他人の人生を歩むことができたら???
捨て去りたい過去・自分と決別することができたら??

新しい人生は短かったけれども、幸せだったに違いない。妻・子供たちのこともほんとに愛していただろう。ただ、この隠さなければならない事実とどのように折り合いをつけていたのだろうか?気持ちを裏切っているという罪悪感、後ろめたさが常にあったのでは??あるいは、すっかりと忘れて、新しい人生を歩んでいたのか?

純粋で素直な主人公がこうでもしないと新しい人生を歩むことができなかった生い立ちがかわいそうで、人生は厳しいなと感じた。でも、その後悠人くんが、とても素敵に成長しているのがうれしかった。母親目線で涙があふれてきた。

城戸家は、価値観、気質の違いを感じながらもともに生活をしている。夫婦でありながらもこれ以上は言ってはいけないという危うい関係性。壊したいわけではないが、分かり合えない価値観との葛藤。他者の存在、お互いを認めようとするために努力をする微妙な感じ。まぁ、夫婦はこんなもんか(妙に納得)。