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桜庭一樹「ファミリーポートレイト」

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本を読むということはいいことだなぁと思えた本でした。
この本の内容がいい話という意味ではなく、本を読むことで、主人公は過酷な現実から逃避でき、生き延びることができる。空想や想像することで希望が持てたのです。

この話、いったいどういう方向に進むのか全く想像できず、しかも中身が濃く、ジェットコースターのような人生にただただ息つく暇もなく、読み進んでしまいました。時代背景はいつなのだろう?この話を書いた人はどんな人なのだろう?どんな経験をしてきたのだろう? と不思議な気持ちでいっぱいです。主人公の人生にたくさんのエビソードが詰め込まれており、物語だから許される奇想天外な出来事が次々と起き、読みごたえばっちりでした。作者の想像力はすごいものです。

葬式婚礼の章は、ほんとに不気味で、でももしかしたらそんな風習がある地域があるのかなと思いながらも情景を想像するとぞっとします。

母と子のかかわり。子は母しか頼ることができない世界で、自分を押し殺し、母に喜ばれるよう、母に気に入られるよう、母の気持ちが満足するよう受け入れる。なんとも悲しい状態ですが、選択肢がそれしかなかったら、受け入れるしかないし、それも悪くはないという気になるのかな?狭い世界での限られた人間関係は怖いものです。

母の人生を思い、母の年齢を超えて生きていく。でも成長する過程で、ちょっと普通と変わった感覚を持つ人になっていく。遺伝もあるのでしょうが、特殊な環境で身についた才能が自分のあるべき姿を示してくれる。

日常とかけ離れたストーリーで現実逃避ができました。